2008年01月13日

ホジュンの運気論

許浚(ホ・ジュン)著『東医宝鑑』の運気論

韓国の人気テレビドラマ『ホ・ジュン』で一躍有名になった”許・浚”篇著『東医宝鑑』は実に使いやすく、臨床家のために編纂された医学書だと思います。
『東医宝鑑』の書かれたいきさつは、http://ja.wikipedia.org/wiki/東医宝鑑 このサイトに詳しく書かれています。
この『東医宝鑑』の雑病篇の運気論について、今年の運気を抜粋引用してみます。

雑病篇(一)

一、天地の運気

33)六戊年 赫曦の紀

歳火が太過し、火暑が流行して、肺金に邪を受け、人身の疾病に瘧疾・少氣・咳喘・血溢・血泄・身熱・骨痛などの症状が滲淫するとき、『麦門冬湯』を使う。
『麦門冬湯』
処方:麦門冬・白止・半夏・竹葉・鍾乳粉・桑白皮・紫苑茸・人参 を各一銭、
甘草五分を挫作一貼して、薑三、棗二を入れ、水で煎じて服する。

二、六十歳運気の主な病気

一、子午の歳の場合

少陰司天、陽明在泉だが、気化運行は天に先立つ。『正陽湯』が良い。

「初気」 太陽が厥陰に加わって、春分前六十有奇を主管するので、関節痛、腰   痛、中外瘡瘍などの症状が流行する。
「二気」 厥陰が少陽に加わって、春分後、六十有奇を主管するので、淋疾、目赤、気欝、熱のある症状が流行する。
「三気」 少陰が少陽に加わって、夏至前後、各三十日有奇を主管するので、が逆上し、心が疼痛し、寒熱が入れ代わり、咳喘して、眼疾が流行する。
「四気」 太陰が太陰に加わって、秋分前六十日有奇を主管するので、黄疸と衂血があって、咽喉が渇き、痰飲を吐く。
「五気」 少陽が陽明に加わって、秋分後三十日有奇を主管するので、疾病が流行しない。
「終気」 陽明が太陽に加わって、冬至前後三十日有奇を主管するので、上体が浮腫し、甚だしいと血が溢出する。

『正陽湯』
処方:白薇、玄参、川弓、桑白皮、当帰、白芍薬、旋覆花、甘草 各一銭を挫作して、薑五片を入れ、水で煎じて服用する。

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抜粋引用文献:『東医宝鑑』昭和53年3月15日初版発行 発行所:株式会社 サンケイグラフ社 発行人:上原金一 訳者:不明 序文は大塚敬節

posted by 椿菴 Ching-an ちんあん at 01:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2008年01月08日

2008年 平成20年 戊子歳の運気

2008年 平成20年 戊子歳の運気


紀元前漢の時代に編纂された「黄帝内經素問」という医学書の中に、それぞれの歳に起る気候の変化と自然界や人々に及ぼす影響や養生法また治療法のヒントが書かれた「運気論」と謂う編がある。
60年サイクルで同じような気候がやってくると書かれている。確かに60年前と比べCO2排出量が確かに増え、温暖化していると言われているが、この「運気論」によると今年もかなり暑くなり、気候の変動が激しくなるように書かれている。これが現代に当てはまるかどうかはこの一年が過ぎてみないと確かかどうか分からないが、昨年、一昨年の運気もブログにアップしてあるのでお確かめください。

(紫色の大文字は「黄帝内經素問」運気論の本文の読み下し文章。黒色の小文字はその訳文)(本文中に?の文字がある場合は、ブログで使える字体に限りがあるので、常用漢字に書き直したが、PCによっても変換出来ないこともあり)
 訳文については、未だ完璧といえないので、気がつき次第に訂正、また追加することがあります。お気付きの点がありましたら、コメントをお願いします。

帝 曰く 善し 少陰の政はいかに

岐伯 曰く 子、午の紀なり


十二支の子と午の歳は少陰が司る。
本年は十干が戊(つちのえ)、十二支は子(ね)で、60年に一度この組み合わせが来る。


司天 少陰(君火)

中運 太徴(火)

在泉 陽明(燥金)

戊子 天符

Unki-hayami-w.jpg画像全てクリックすると拡大
「運気早見表」小寺敏子老師考案、椿野央制作(不許複製)

戊子の歳は司天が少陰(火)、中運が太徴(火)で、
どちらもおなじ性質が合わさるのを天符という


その運は炎暑

その化は暄曜、欝燠

その變は炎烈、沸騰

その病は上熱、血溢


この年回りは、激しい暑さに見舞われるでしょう。
その化は、暖かく光り輝き、蒸し暑い。
その変は、暑さ激しく、まるで沸騰するかのよう。
起こりやすい病気は、のぼせやすく、出血しやすい。

太徴 少宮 太商 少羽(終)少角(初)

古典の文章は出来るだけシンプルに書いて、その中に多くの意味を表現しようしているので、とても難解だ。
五行:木  火  土  金  水 
五音:角  徴  宮  商  羽
主運:初運 二運 三運 四運 終運(主運は毎年変わらず)
   少角 太徴 少宮 太商 少羽
   大寒〜春分〜忙種〜処暑〜立冬
客運:初運 二運 三運 四運 終運
   太徴 少宮 太商 少羽 少角(客運はその歳毎に変化する)

この主運と客運の組み合わせによりその歳の運気が定まる。
goon-kenon.jpggoun-syuun.jpggoun-kyakuun.jpg
十干のうち甲、丙、戊、庚、壬の陽干は”太”と云い、大過。
     乙、丁、己、辛、癸の陰干は”少”と云い、不及。
十二支六気は、子、寅、辰、午、申、戌は陽支で陽年。
       丑、卯、巳、未、酉、亥は陰支で陰年。
子歳、午歳は少陰で陽支、陽年にあたる。
太徴の”太”は陽干である戊(つちのえ)火運で大過となる。


凡そ此の少陰司天の政 気化運行 天に先立つ

地気肅く 天気明らかなり  寒 暑に交わり 熱 燥を加う

雲 雨府に馳せ 濕化 迺ち行なわれ 時雨 迺ち降る

金火 徳を合わせて 上 螢惑 太白に應ず

其の政は明らか  其の令は切  其の穀は丹白

水火 寒熱 氣交に持して 病の始めと為す也

熱病 上に生ず 清病 下に生ず  寒熱凌犯して中に争う

民の病 咳喘 血溢 血泄 鼻九嚏 目赤く眦瘍 

    寒厥 胃に入り 心痛 腰痛 腹大に 咽乾き上に腫る


 大凡この少陰司天の年回りは、気候の変化が早め早めにやってくる。
 在泉である地の気は陽明(燥金)の働きである粛殺(物を枯らす働き)が強く、司天は少陰(君火)の明徳である明るく光り輝く働きがあり(熱=暑)
 寒が暑に交わるとは、この歳の「初の氣」の客は太陽(寒水)で、去年の「終の気」は少陽(相火)で、少陽の暑熱が退くところに初の氣の寒が交わる。
 熱燥をくわうとは、司天の君火の熱に在泉の燥気が加わる。
 雲が北方である雨府に馳せるとは、司天の君火が土を生じ、その土が在泉の金を生ず。その間の濕土の変化が時々に雨を降らす。
 在泉の金、司天の火が徳をあわせ、螢惑(司天の火星)と太白(在泉の金星)に合い応じる。
 司天(君火)の政は光明。在泉(燥金)の令は功切。
 司天の穀物は丹(赤色)、在泉の穀物は白。
 (水火の二字は衍字? 寒の字を清の字に改め)司天の火熱と在泉の金清とが天地の間に交わり病気の始まりとなる。
 司天の火熱により上焦の陽分に熱病が生じ、在泉の金清の影響で下焦の陰分に冷えに寄る病気が生じる。そして、司天、在泉の寒熱の気が領域を犯し中焦でも寒熱が争う。
 人々の病気は、咳や喘息。上の七竅(目、鼻、耳、口、舌)下の二陰(尿道、肛門)から出血する。また、「鼻九嚔」は活字が無く、鼻九は一字で鼻つまり、鼻つまりむせぶこと。目の充血や目頭、目尻のただれなどが起りやすい。
 在泉の清金の影響で、手足が冷えることにより胃に影響し、みぞおちや胸が痛み、腰痛、腹が張り、のどが乾き、また上部が腫れることが有る。


kisetu-w.jpg「類経図翼」より

初の氣は 

地気 遷り 燥 將に去らんとす

寒 迺ち始まり 蟄 復た藏れ  水 迺ち冰り 霜 復た降る

風 迺ち至りて 陽氣 欝す

民 反って周密し  関節 禁固し 腰椎 痛む

炎暑 将に起らんとして 中外 瘡瘍す


syuki-w.jpg主気kyaki-w.jpg客気

 初の氣は:1月21日(旧12月14日)大寒〜(客は太陽寒水、主は厥陰風木)

 去年の在泉の少陽相火の気の遷り。(燥は熱の誤りか?) 客である太陽寒水の働きにより熱が去る。  客の初の氣の太陽寒水の影響で寒さが始まり、虫がまた隠れ、水も凍り、霜もまた降りる。  主の厥陰風木の働きが至って盛んになるが、また春の陽の気である太陽寒水が閉塞して欝する。
 このときは本来ならば、人々の気が伸びようとするときだが、反って周密し、関節が強張り屈伸しにくくなったり、冷えが腎、膀胱に宿り腰痛を起こす。
 初の氣の終ろうとするときは、次ぎの二の気の主は少陰君火、客は厥陰風木で、炎暑が将に起ろうとする。このとき内熱が欝滞して身体の中や外に瘡瘍が起る。

*注:客気は天に属し、その各年の十二支に従って変化する。
   主気は地に属し、毎年その位は定まっていて変わらない。
今年の客気・主気の組み合わせは:
   初の気→ 二の気→ 三の気→ 四の気→ 五の気→ 終の気
    春〜 春末・初夏〜 夏〜 長夏・土用〜 秋〜   冬
客気:太陽寒水・厥陰風木・少陰君火・太陰濕土・少陽相火・陽明燥金
主気:厥陰風木・少陰君火・少陽相火・太陰濕土・陽明燥金・太陽寒水



二の氣は

陽氣 布き 風 迺ち行なわれ 春氣 以て正しく 萬物 應榮す

寒氣 時に至る  民 迺ち和す

其の病 淋 目暗く 目赤く 氣 上に欝して熱す

 二の気は:3月20日(旧2月13日)春分〜(客は厥陰風木、主は少陰君火)

客の厥陰と主の少陰の陽氣が合して、萬物春の気が応じ栄える。
寒氣時に至るは、初の氣の太陽寒水の余波で寒くなることも有るが。(これは衍文という説も有る) 主、客は木と火で相生でその気は正しく、人々は調和する。
人々の病気としては、小便の出が渋る、目が見えにくくなったり、目の充血、上焦に気が欝滞してのぼせる。

三の氣は

天政 布き 大火 行なわれ 庶類 蕃鮮す  寒氣 時に至る

民の病 氣厥 心痛し 寒熱 更々作り 咳喘 目赤し


 三の気は:5月21日(旧4月17日)小満〜(客は司天の少陰君火、主は少陽相火)

 主と客ともに陽で火(熱)のため、萬物が繁茂する。 その陽が極まりと急に寒さが来るかも?(張氏の説)(馬氏は寒を熱に作る)
 人々の病気は、火熱のために気が逆上して胸の痛みが起こり、寒気や熱が交互に起り、肺が熱を受け咳や喘息になり、また肝が熱を受け目が充血する。

四の氣は

潯暑 至る  太雨 時に行なわれ 寒熱 互いに至る

民の病 寒熱 咽乾き 黄疸 鼻九衂 飲發す
 
 四の気は:7月22日(旧6月20日)大暑〜(主・客ともに太陰濕土)

 濕熱が燻蒸して盛ん。大雨が時々降り、寒さ暑さが交互に来る。熱はこのときの時候の気。
寒は在泉の金清の影響。
 人々の病は、寒気と熱が交互に来たり、のどの渇き、黄疸、鼻九(一字)鼻つまり、鼻血、痰が溜まるなどの症状が出る。


五の氣は

畏火 臨み  暑 反って至り  陽 迺ち 化し

萬物 迺ち生じ 迺ち長じ 迺ち榮う  民 迺ち康し

其の病は温


 五の気は:9月23日(旧8月24日)秋分〜(客は少陽相火、主は陽明燥金)

 畏火は相火の別名。 涼しくなるときなのに、反って暑くなり、その陽氣のために萬物は成長し栄える。人々は暮らしやすい。
 病気は温病になりやすい。


終の気は

燥令 行なわれ  餘火 内に格ぐ

上に腫れ 喘す  甚だしきときは則ち血溢す

寒氣 數しば擧するときは則ち 霧滂 翳し

病 皮奏に生ず 内 脇に舎り 下 小腹に連なりて 寒中を作す

 地 将に易らんとす也

 終の気は:11月22日(旧10月25日)小雪〜(客は在泉の陽明燥金、主は太陽寒水)

 五の気の少陽相火の餘火に客の陽明燥金と収斂の働きが表を閉ざして、欝熱が内側にこもり、顔が腫れたり喘息が起る。甚だしい時には出血することあり。
 寒氣が度々来るときは、霧や滂は、盛んに雨が降り、翳はかげり、曇り、晴れ晴れしない。
 病気は肺に影響し皮膚病や、在泉の燥金が旺気し、肝木が病を受けて厥陰肝經の走行するところの脇から下腹部にかけて冷える。
 この時はちょうど地氣に属す在泉の気が次ぎの歳の春の気に易ろうとする時気である。


必ず其の運氣を抑えて 其の歳の勝を資る

其の欝發を折きて 先ず化源を取る

暴過して 其の病を生ぜ使むること無かれ也

歳穀を食らいて 以て眞氣を全うす

間穀を食らいて 以て虚邪を避く
kannki-W.jpg間気(間穀)

 五運六気の有余大過を抑えて、不及のものを助ける。火運大過ならば、心火を抑えて、肺金を助ける。
 少陰(君火)が司天で大過のため、手の太陰肺經が欝す。君火の火を抑えて、肺経の欝気をたすける。また陽明(燥金)が在泉であると足の厥陰肝經が欝を発するから、燥金を抑えて、肝經を助ける。 以上のようにして、暴卒に大過の邪気が生じることが無いようにしないといけない。
 歳穀とはその司天、在泉に属する穀物。この歳の司天は少陰君火でその色は丹(赤色)の穀物。在泉は陽明燥金で白色の穀物を食べて眞氣を養う。
 間穀とは左右四間に属する色の穀物で、司天か在泉の大過の方の左右を指す。
今年は司天の少陰が大過だから、少陰の左は太陰(土=黄色の穀物=黍)、右は厥陰(木=青色の穀物=麦、緑豆?など) 黄色や緑色の穀物を食べて虚邪を避ける。
*張氏の説ではこの在泉左右の間穀か? と言うことは今年は赤色(小豆、赤米など)、黒色(黒豆、黒米など)を食べて邪気をはらう。


歳に宜しく鹹に而て其の上を調う 
 
 甚だしきときは則ち 苦を以て之を發す

酸を以て之を収めて其の下を安んず

 甚だしきときは則ち 苦を以て之を泄す


 鹹(水の性質である塩から味)で司天の火の勢いを抑えて調える。
  火の勢いが激しい時には、苦味の物で火気の欝を散じる。
 酸味の物で在泉の気を収め補う。
  その勢いが激しい時には、苦く冷す働きの物を採って、滞った熱を下す。

氣の同異を適りて 而して之を多少す

天氣に同じき者は 寒清の化を以てす

地氣に同じき者は 温熱の化を以てす


 気とは司天、中運、在泉の三気の関係を良く考慮して対処すること。
(今年は司天が君火、中運が火、在泉が燥金だから、熱が多く乾燥すると考えられる)


熱を用には熱を遠ざけ  涼を用には涼を遠ざけ

温を用には温を遠ざけ  寒を用には寒を遠ざく

食宜 法を同じくす 


 夏の暑い時期には、熱である辛温剤を使わず。寒薬を用いる時には、冬の寒い時期には避けるなど。
 食べ物も生活環境も同じように考える。
(暑い時には激辛の物を食べて、うんと汗を出して涼しくなると言うことも考えられるが?)


假なること有るときは則ち反す  此れ其の道也

是に反する者は 病 作る矣


 夏に冷房しすぎたり、冬に暖房しすぎたりして、その季節に会わない症状がでた時には法則にかかわらず対処すべき。
 その季節に順応しない生活をしていると病気になる。


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本文書き下し、現代語訳:椿野 央
引用文献:黄帝内經素問「六元正紀大論篇第七十一」、張介賓「類経図翼」
参考文献:小寺敏子著「和読黄帝内經素問」、椿野央編著『素問表解』(デジタル素問)、岡本一抱子「黄帝内經素問諺解」、「運気論奥諺解」など




posted by 椿菴 Ching-an ちんあん at 00:27| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記